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【読書感想】怪しい店/有栖川有栖

有栖川有栖さんの短編集「怪しい店」を読んだ。そのタイトル通り、様々な店がテーマになった短編集だ。主役を務めるは、われらが火村先生と作家アリスの名コンビ。さながら、長年通っているなじみの小料理屋のような、安心できる味が楽しめた(そんな行きつけの店ないけど)。

怪しい店 (角川文庫)

怪しい店 (角川文庫)

 

「古物の魔」はとある骨董品店の店主が殺害される話だ。店主は偏屈で、周囲の人とトラブルを起こしがちだったことに加え、最近も売った品を買い戻したいという客ともめていたらしい。果たして彼を殺したのは誰か?

怪しげな容疑者が次々と現れる中、火村先生は、死体の発見状況をヒントにしてたった一人の真犯人に近づいていく。終盤、犯人との行き詰る攻防が印象的だった。

 

「燈火堂の奇禍」は、古書店が舞台。店主が怪しい客を追いかけていき、もみ合いになった結果持病を悪化させて倒れてしまう。店主は倒れる間際に「泥棒…」といっていたらしい。しかし、店からなくなっているものはない。果たして盗まれたものは何か?という短編。単純ながら意外性のある解決に納得。

 

「ショーウインドウを砕く」は芸能プロダクションの社長が主人公で、彼がとある身勝手な理由から愛人を殺してしまう。犯人は、被害者が家の鍵をなくしていたということを利用し、外部からの犯行を装うのだが…という話。これ、なんかテレビドラマで見たことがあったような。途中で真相を思い出してしまった。めずらしく倒叙スタイルでかかれている。些細なほころびから、犯人が追い込まれていく流れは倒叙ものの醍醐味だ。犯人視点だと火村先生が死神さながらに見えるんだな。

 

「潮騒理髪店」は、火村先生が地方でたまたま立ち寄った理髪店での体験談を、電話でアリスに語るという体の話。ある女性が、電車に向かってハンカチを振っているというう映画のような光景に遭遇した火村先生。その後に寄った理髪店で聞いた話が、さきほどの女性に意外な形でつながって…。電車にハンカチを振るという昭和を感じさせるシーンだが、実は予想もできないような理由があった。予想もできなかった結末だったけど、面白かった。

 

「怪しい店」は表題作。人の悩みをただ聞くという「みみや」という商売をしていた女性が殺害された。第一の容疑者であった、夫にはアリバイがあることがわかるのだが。謎解きがなかなかに複雑で、ちょっとわかりにくかった。火村先生もいつももったいぶるから…。

 

通して読んでみて、これはすごい!というような展開はなかったものの、どれも面白かった。もう、ここまで作品の数が多くなると、クオリティを維持するだけでも大変だろう。有栖川先生が、今でもコンスタントに作品を書いているのは本当にすごい。

 

ちなみに、あとがきが烏賊川史シリーズの主人公とヒロインの対話形式になっている。これだけでも一つの作品として楽しかったので、文庫版をもし読んでいたら、他の機能も合わせて確認す