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【読書感想】午前零時のサンドリヨン/相沢沙呼

彼方のアストラに絶賛コメントを載せていたので、がぜん親近感が増した相沢沙呼さんのデビュー作、「午前零時のサンドリヨン」を読んだ。サンドリヨンとは、いわゆるシンデレラのことなんだそうだ。 

午前零時のサンドリヨン (創元推理文庫)

午前零時のサンドリヨン (創元推理文庫)

 

僕は、一人のクラスメイトが気になっている。いつも憂いを帯びた表情で、あまり友達もいなそうな酉乃初。でも僕は彼女に別の顔があることを知っている。彼女は、夜になるとレスランバーでマジシャンのアルバイトをしているのだ。まるで別人のように華やかにほほ笑む彼女をみた瞬間、完全に一目ぼれをしてしまったのだ。でも、僕は一目ぼれってやつが嫌いだ。なんだか、彼女のことを何も知らないのに、外見だけで好きなったみたいに感じるから。だから、酉乃のことをもっと知って、本当の意味で彼女に恋をしたいんだ…。

 

と、そんな、あま~い導入で始まる本作。高校生の僕、須川君が、マジシャン兼高校生の酉乃さんと協力して、学校で起こるいくつかの事件の謎を解いていく。その過程で、二人の仲は進展するのか…?みたいな感じの話だ。

 

読み始めたときは、正直語り手である須川君のモノローグに辟易した。「僕ってば、なんて…なんだろう」「嘘です、すみません閻魔様」などなど、なんというかあふれる昭和感というか(閻魔様って…)、良く少年マンガに出てくる少女マンガのパロディシーン的な、大げさかつ甘ったるい言い回しが頻発して、ちょとこれはきついなあ、と思ったものだ。一応、この点は後半に行くにつれて薄まって解消されていくので、自分と同じように最初で躓いても頑張って読み進めて欲しい。

 

須川君の恋愛脳全開っぷりに比べて、酉乃さんや彼女を取り巻く女子たちの心の中はかなりシビアだ。将来の夢と自分の力量の狭間で板挟みになっていたり、友達との人間関係に苦しんでいたり、いじめにあっていたり…。学校で起こる謎を追っていくと、最後は女の子の心の問題につきあたる。この作品の謎解きは、不思議現象についてのテクニカルな部分での種明かしと、そして次に原因となっている心の問題を解いていくという二段構え。そしてこの時に、酉乃さんのマジックが役に立つ。目の前で起こる不思議な現象に気を取られて、思わず本音を吐露してしまったりするわけだ。マジシャン設定を生かした上手い構成だと思う。

 

そして、最後には酉乃さん自身の心の問題が見えてくる。ここで須川君は男を見せられるのか?最後の最後で、ワトスン役だった彼が主役に躍り出る展開も面白くて引き込まれた。

 

素直な気持ち、トリックや謎解きでそこまで印象に残ったものはなかったけど、恋愛もの兼青春小説として、良くできている作品だと思う。酉乃さんかわいいしね。須川君、気になったクラスメイトの女子がいたとして、話しかけて仲良くなろうって行動ができるだけでも偉いしすごいよ。自分だったら、絶対できなかったな。三年間片思いして終わりだ。まあ、そもそも男子校だったわけだけど。