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【読書感想】卯月の雪のレター・レター/ 相沢沙呼

 相沢沙呼さんの「卯月の雪のレター・レター」を読んだ。

卯月の雪のレター・レター (創元推理文庫)

卯月の雪のレター・レター (創元推理文庫)

 

いわゆる日常の謎系のミステリ短編集。この方の作品を読むのは初めてだったが、謎解きよりも心理描写に重点をおいた、丁寧に書かれた作品という印象を持った。

 

「小生意気リゲット」は、仲良しだったはずなのに、急に態度がよそよそしくなった妹に困惑する姉の話だ。もしかしてぐれちゃったのか?と思わせるのだけど、そこにはとある事情が隠されていた。同じ親から生まれても、才能や運やその他いろいろなめぐりあわせで、恵まれたりそうでなかったり。恵まれているほうが気にしていて、相手は気にしていなかったというのが面白かった。

 

「こそどろストレイ」も姉妹の話だけど、こちらは年齢の離れた姉妹が出てくる。年の離れた兄弟っていうのは、上の子が面倒を見てあげて仲良しになるパターンもあるけど、なかなかに難しい部分もあるんだろうな。この作品に関しては、謎解きは本当におまけ程度。

 

「チョコレートに、踊る指」は、何かの病気で入院する少女と、彼女を見舞う友人の話。なのだが、二人の間には何か秘められた過去があり、一方見舞いにくる側の女の子には、もっと大きな秘密があった…という話。基本的に(見舞客のほうの)女の子のモノローグで話が進むのだけれど、正直かなりまだるっこしい…。(私には秘密が…でも、いえない…)みたいな心理描写が延々と続くので、「早く言えやっ!」と内心思ってしまった。というか、さすがに普通に読んでいたら大体わかってしまうと思う。この話に関してはオチも含め若干スッキリしない感じが残った。ミステリ的には、一番大きなネタが仕込まれているんだけど、心理描写にうもれてしまった感じかな。

 

「狼少女の帰還」は、教育実習で小学校にやってきた大学生が主人公。受け持ったクラスには、ちょっと周囲から浮いている女の子が一人いた。ちょっと独特の雰囲気をもつそのこは、クラスメイトから嘘つきといわれていて…。狼少女が、小学生の女の子と、主人公の幼少期に両方かかっている秀逸なタイトル。女の子のついたウソの謎も、結構納得のいくものだった。

 

「卯月の雪のレター・レター」これ、なんでレターを二回重ねているんだろう?なにか意味があるのかな。確かに響きはいいけれど。

祖母の七回忌の法要で、久しぶりに一つ下のいとこと再会した主人公は、彼女から不思議な手紙を見せられる。すでに6年前に亡くなった祖母から、祖父にあてた手紙が前月届いたというのだ…という話。

表題作だけあって、とても良かった。これが一番好きかな。手紙についての謎解きも、ちょっとひっかかっていたところか伏線だったので納得できるものだったし、何より心理描写が、男の自分にも共感できるものだったからだ。

読書漬けの地味な毎日を送っている自分と、華やかに青春を謳歌しているように見えるいとこ。勝手に劣等感を感じてしまったり、自分はなにかを決定的に間違えてしまったんじゃないかと悩んだり…。そういう感情は、自分にも覚えがある。10代のうちはそういうことに振り回されたりもするよね…。

最後にいとこ側からのセリフで、鏡合わせのようにお互いに相手に引け目を感じていたことがわかるのも良かった。まあ、現実には若いころはエンジョイ勢のほうが強いと思うけれども。

 

読み終えてみて、特に、というかほぼ100%、若い女性の心理描写に全振りしている作品だったので、中年男性の自分にはちょっとピンとこないところもあった。ミステリとしては味付け程度でかなり薄味で物足りない部分も。でも、全体としては気持ち良く読むことができた。たぶん心底嫌なやつとかが出てこなくて、安心して読めたからだと思う。また機会があったら同じ作者の本を読んでみたい。