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【読書感想】ブギーポップ・パラドックス ハートレス・レッド/上遠野浩平

ブギーポップの原作を読み返すプロジェクト第9弾。

 

ブギーポップ・パラドックス ハートレス・レッド (電撃文庫)

ブギーポップ・パラドックス ハートレス・レッド (電撃文庫)

 

久々読み返して、これはやっぱり面白かった。時系列としては、1巻から始まる時間軸が現在とすると、少し過去にさかのぼった話。中学生時代の霧間凪、そして彼女が中学生時代に同級生だった少女、九連内朱美の物語だ。

 

朱美は統和機構に協力するMPLSで、人の感情に鍵をかけるという特殊能力をもち、その能力と、時には彼女自身は「レイン・オン・フライデイ」というコードネームで呼ばれている。親として不適格者だった両親とは幼いころに別れ。今は母親役兼監視役の合成人間、「ミセス・ロビンソン」と一緒に暮らしている。朱美は、むしろ学校の仲間がこっそりと呼んでいる「傷物の赤」という名前のほうが気に入っている…。

 

というのは半分本当で半分嘘である。朱美自身は特殊な能力などもっていない。ハッタリと機転で、そう思わせているだけだ。統和機構という巨大で得体のしれない組織に対して、舌先三寸で渡りあおうとし、またそれを事実やってのけている。”正義の味方”として世界の敵と戦う霧間凪と同種の突出した人間であり、また在る意味では好対照だといえる。

 

そんな彼女だが、読んでみるとすごく人間臭いのだ。色々なものをすでにどこかに置いてきてしまって超越した感のある凪と比べても、年相応の恋愛感情であったり、(ニセモノとはいえ)母親との緊張感と気安さが同居した独特のやり取りであったり、そういうものをすごく素直に出してくるので、わかりやすいし、つい感情移入してしまう。 

 

それだけに、中盤以降の展開で、彼女が大切にしている様々なものたちを失っていく展開には胸が痛かった。でも、そこで彼女は終わらなかった。自分の持つ(あるいは持たない)能力を駆使して、事態に立ち向かったのだ。逆境からまた前に進む意思もまた、凪のそれと同種のもので、やはり二人は似た者同士だと思えた。

 

ところで、朱美と対になる存在として描かれてる凪がかなり活躍するのもこの話の特徴だ。危険なMPLSをむこうに回して渡り合い、中学生にしてとんでもない意志力、戦闘能力を持っていることがわかる。ブギーポップの出番が控えめな分、生身の人間がバリバリ戦う、珍しい展開になっているのも面白い。

 

最後にちらりと、統和機構の中枢(アクシズ)の存在がにおわされる。今のところ正体不明だが、今後の展開で重要になってくるはずだ。

 

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