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【読書感想】夜明けのブギーポップ/上遠野浩平

ブギーポップの原作を読み返すプロジェクト第5弾。

 

夜明けのブギーポップ (電撃文庫)

夜明けのブギーポップ (電撃文庫)

 

 ブギーポップ&炎の魔女誕生秘話を含む短編集。ただの過去エピソードというだけではなく、謎多き二人のキャラクターを掘り下げるとても読み応えのある1冊。

 

「ブギーポップの誕生」は、どこからか浮き上がってきた不気味な泡がこの世界に登場する記念すべきエピソードでもあり、炎の魔女がその信念を心に宿すきっかけとなった物語でもある。その中心にいるのは合成人間スケアクロウ。統和機構の命でMPLSを探していたスケアクロウは、黒田慎平という名の探偵として人間社会に潜伏していた。彼が、調査のためにある病院へ赴き、一人の少女と出会ったことが、スケアクロウの、そして少女の人生を大きく変えることになる…。期せずして炎の魔女のロールモデルとなったスケアクロウの生き様というが矜持というか、心にともった炎というか…そんな何かがひたすらにかっこいい。これがハードボイルドというやつか。

 

「霧間凪のスタイル」は、そんな風に生まれた炎の魔女の日常…というにはあまりにも普通じゃないのだが、とにかくそんな話だ。正樹や綺も登場し、vsイマジネーターの後日談としても読める。また、永遠のパートナー候補、羽原健太郎が歪曲王に続いて登場している。そんな気心知れた仲間に囲まれた、ちょっとゆるい(というにはあまりにも剣呑なのだが)炎の魔女の姿を見ることができる。

 

「天より他に知るものもなく」は、ある世界の敵が担当するエピソード。そこには当然ながらブギーポップも登場する。しかしいまだ決戦には至らず。静かな前哨戦とでもいうべき一編だ。

 

「パブリック・エネミー・ナンバーワン」は、霧間凪の父親にして人気作家の霧間誠一が主役のエピソードだ。ある意味、このシリーズの最重要人物でもありながら、物語の開幕時にはすでに死んでいた謎多き人物。彼は、普通に家族を愛し、娘を愛し、自分の存在証明のために悩みもがき苦しんだごくあたりまえの人間だった。幼い凪との微笑ましいエピソード満載で、切ない気持ちになった。

 

「虫」は、誕生した世界の敵フィア・グールとの戦いを描く。そこには世界の敵の敵たるブギーポップと正義の味方たる炎の魔女が登場することになる。二人の長きにわたる不思議な関係が始まった瞬間に注目だ。それにしても恐るべきはフィア・グール。統和機構やMPLSとのかかわりもなく、ただ自分の悪意だけをもってここまでの怪物と化すとは、シリーズの中でもなかなかに特異な存在なのではないだろうか。愛したスケアクロウの仇討のためにモ・マーダーに立ち向かったピジョンが健気で悲しく、印象に残った。

 

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