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【読書感想】ブギーポップ・イン・ザ・ミラー パンドラ/上遠野浩平

 

ブギーポップ・イン・ザ・ミラー 「パンドラ」 (電撃文庫)

ブギーポップ・イン・ザ・ミラー 「パンドラ」 (電撃文庫)

 
ブギーポップ・イン・ザ・ミラー「パンドラ」 (電撃文庫)

ブギーポップ・イン・ザ・ミラー「パンドラ」 (電撃文庫)

 

ブギーポップの原作を読み返すプロジェクト第3弾。

 

ブギーポップシリーズも数あれど、自分的に一番好きなのはこの「パンドラ」なのだ。青春感とでもいうかなんというか、少年少女たちの一瞬の、それだけに美しい生命の輝きというか、とにかく自分の好きな要素がぎゅうぎゅうに詰まった作品だ。

 

人の目を覗くと、瞳の中にその相手がいつか出会う人物が見える「イントゥ・アイズ」の海影香純。いつか嗅ぐにおいを感じ取れる「アロマ」の七音恭子、未来に起こることを漠然と予測できる「ベイビー・トーク」の数宮三都雄、未来に見るものをスケッチブックに描くことができる「自動書記」の辻希美、いつか聞く声を再現できる「ウィスパリング」の神元功志、体に未来の出来事に関係する文字が浮かび上がる「聖痕」の天色優。

 

それぞれ、一人では役に立たないささやかすぎる予知能力を持つ6人は、偶然か必然か出会ってグループを作り、全員の予知能力を合わせて未来の出来事を予測するゲームを繰り返していた。それは遊び半分で、ちょっとした人助けをしたり、冒険を楽しんだりという範囲で、その能力ゆえに社会から浮きがちであった彼らにとっては、自分をさらけ出せる仲間と過ごす時間そのものが何にもかえがたかったのだ。しかし、彼らは出会ってしまう。ある世界の敵と、それをめぐって争うものたちに…。

 

と、こんな話なわけだが、これまでの2作とは違ってかなりストーリー自体ストレートで分かりやすい。ちょっとした非日常の冒険を楽しんでいた6人が、謎の組織から逃げ出した少女を保護したことから、大事件に巻き込まれてしまうという王道の展開で、素直に楽しめる。スタージョンの「人間以上」っぽくてSF感もある。

 

そして、自分が好きなポイントとしては、6人の仲間感というか友達感というか、そういう眩しいようなキラキラした輝きだ。それぞれに事情があったり、仲間に秘密を抱えているものもいるんだけど、それすらも「仲間でいるためのウソ」であったりして、みんなすごく良いやつなのだ。いつも冗談でからかっているけど実は香純のことが好きな七音、一見そっけない態度をとりつつも幼馴染の神元に思いを寄せる希美。うるさすぎない恋愛要素もちょうどいい塩梅だ。

 

だからこそ、中盤以降の展開には手に汗を握るし、胸が痛かったりもするんだけど…。

 

最終盤で、七音が事件に巻き込まれるちょっと前のことを思いだすシーンがある。みんなでいつものように予知ゲームをして、何かがあるはずだと目星をつけた場所に向かうんだけど、それがとんだ勘違いで盛大に空ぶってしまう。でも、みんなは愚痴を言い合いながらも顔は笑っていて、七音はいつも、いつまでもこんな日々が続くんじゃないかと想像する…。

 

………(涙)。

 

だめだ、こういうシーンに弱いんだよな~。かなわなかった幸福な未来、みたいなさあ…。結局今回も同じところで涙してしまった。前回は、客先周り中に立ち寄った永田町の喫茶店で読んだなあ。もう20年前か…。いろんな意味で遠くにきちゃったなあ、俺も。

 

と、自分がたりはさておき。

 

ブギーポップシリーズとしては若干異色の作品(ということはつまり普通っぽい)だと思うのだが、青春小説としてすごく良くできていると思うし、個人的には大好きな小説だ。後のシリーズで、本作のキャラクターが登場するのかは覚えていないけど、彼らのこれからがとても気になるし、願わくば幸福であってほしいものだ。

 

過去の感想

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