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【読書感想】ブギーポップは笑わない/上遠野浩平

ブギーポップアニメ開始記念、原作を最初から再読してみるプロジェクトを開始してみる。

 

ブギーポップは笑わない

ブギーポップは笑わない

 

まずは記念すべき第1作、「ブギーポップは笑わない」だ。前に別記事で書いたけど、出張中に立ち寄った書店で発売したばかりのこの本を見つけて、ほとんど一目ぼれのような形で買ったのがブギーポップとの出会いだった。今回再読して、言葉のいいまわしや世の中の描写にはさすがに時代を感じる部分もあるものの、核となる物語の部分では驚くほどに新鮮で色あせない魅力を再確認することができた。

 

人を食らう怪物マンティコアと、それを追う謎の存在エコーズ。そして怪人ブギーポップ。それらの戦いに巻き込まれてしまった少年少女たちの物語。それがこの作品のおおざっぱな紹介ということになる。後のシリーズを象徴する、統和機構やMPLSといったキーワードこそまだ出てこないが、ブギーポップシリーズの味という部分ではほとんど完成されていると感じた。

 

一番の特徴は、複数の人物の視点を切り替えながら、一つの事件を描いていくことだろう。そうした手法が小説で使われる場合、様々な視点から描くことで一つの事件の様々な面を見せるというパターンと、逆に多角的な描写で見えなかった面を明らかにしていくというパターンがあると思うのだが、この作品の場合はそのいずれとも違う。事件はあくまでも鏡であって、それぞれの視点人物が鏡に映した自分自身を見つめなおすような物語になっているというか…、色々な面から見ることで事件はその輪郭を失い、あれはなんだったんだろう?という、作中人物の何人かが抱いたのと同じ感慨を読者に抱かせるような作りになっているように思う。

 

面白いのは、読んだ後に印象に残っているのが、マンティコアでもエコーズでも、ブギーポップですらなく、何の力も持たない普通の少年少女たちの物語だということだ。好奇心と正義感の赴くままに事件に飛び込んでいった末間さん、知らずのうちに世界を救い、そして死んだ紙木城さん、そして誰よりも事件の核心に近づき、それでもなお自分を失わなかった新刻さん。彼女たちの活躍が何よりも心に残っている。特に新刻さんはMVPといってもいいと思う。マンティコアを前にしての啖呵は見事だった。ブギーポップをして、見事だといわしめた意思の強さは伊達ではない。

 

これから、極力アニメ放映中に原作を最新刊まで読んで、順次感想を書いていきたい。