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絶え間なき離婚危機と戦うブログ

【読書感想】FAKE OF THE DEAD/土橋真二郎

 

このところ、「カメラを止めるな!」という映画が人気だそうだ。低予算にも関わらず面白いということで話題になっている。実際に見たわけではないのだが、どんな内容なのかはなんとなく漏れ伝わってくる。つまり、ゾンビものの映画が劇中劇になり、その外枠の話との二段構えのストーリーらしいということだ。このFAKE OF THE DEAD も、それに近い構造を持っている。  

 

 

土橋真二郎さんは、高校生くらいの若者たちが閉鎖環境に放り込まれ、謎のルールに従って殺し合いをさせられるという、いわゆる「デスゲームもの」の小説を大量に書いている作家さんだ。デビュー作以降何作か読んだのだが、デスゲームのルールがあまりにも作り物感が強かったのと、心理描写がくどくてあまり好みにあわず、読まなくなってしまった。しかし、この作品は、登場人物の年齢層が高く心理描写が落ち着いていたせいか、デスゲームものじゃないせいなのか、それとも単純に土橋さんがキャリアを積む中で作風が変わってきたのか、前に感じた読みにくさが全くなく、素直に楽しむことができた。

 

物語は、何人かの若者が廃墟と化したホームセンターに閉じこもっているところから始まる。3か月前に、死体がよみがえる現象が発生。その現象は瞬く間に世界中に広がり、社会生活は破綻。世界にはゾンビがあふれ、もう逃げ場はない。この死者の世界で、ゾンビから隠れて生きていくしかない…。

 

というのは、実は作中人物たちが作った設定であり、ゾンビがいる世界は虚構である。立てこもりメンバーの一人、深雪という女性は、「死体が動き出す」という妄想にとらわれ精神を病んでしまっている。仲間たちは、深雪の心を癒すために、あえて彼女の妄想に合わせた世界を作り出した。仲間たちの言葉を十分に受け入れられるだけの落ち着きが戻ったタイミングでネタばらしをし、ソフトランディングさせることで深雪を妄想から解放しようとしているのだ。

 

…と、この設定にのれなかったらもうこの作品は楽しめないので、回れ右して戻ったほうが良い。個人的には、無理やり感は否めないものの、物語上の設定としては十分に許容範囲だった。このあと、仲間たちの中に外部の女性が乱入して芝居が破綻しそうになったり、ホームセンターを脱走し、途中でならず者に絡まれたりとトラブルに見舞われながら、とある場所に向かうことになる。

 

途中の展開は、目的地がわからず迷走気味に見えたが、最終章で一気に流れが変わって面白くなった。まるで設定であったはずのゾンビ世界が具現化したかのように、人と人、仲間同士すらも疑い、憎み、ついには殺しあう極限状況が生まれ、守られる存在だった深雪が場を支配し、怒涛のクライマックスに突入していく。深雪の妄想のきっかけになったのはなんだったのか。そして、最後に生き残るのは誰か?

 

終わりよければすべてよし、導入の強引さも途中のグダグダも、ラストの予想できない展開、きれいな伏線回収と意外にも後味の良いエンディングで上書きされて最終的には満足だった。なかなか面白かったので、また土屋作品を新しめのものから読んでみよう。