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絶え間なき離婚危機と戦うブログ

【読書感想】メグル/乾ルカ

今まで乾ルカさんの作品を読んだことはないと思うので、本作が初乾作品ということになる。大学の奨学部に勤めるミステリアスな職員、悠木さんが斡旋するアルバイトを受けたものは、必ず不思議な経験をすることになる…というパターンで構成される連作短編集だ。なんとなく、タイトルや表紙の雰囲気から、穏やかな時がゆったりと流れるような、温かいヒューマンな感じの小説を予想していたが、色々な意味で期待を裏切られた。 

メグル

メグル

 

 1作目は「ヒカレル」。アルバイトを探していた学生、高橋は、死者と一晩手をつないで過ごすという奇妙なアルバイトを紹介される。亡くなった老婆の村では、手の柔らかい遺体は「引く手」となって正者をあの世へと引っ張ってしまう。これを防ぐには、無関係なものが一晩手を握っていくしかない…という言い伝えがあり、その役を果たすためである。と、導入はかなり面白く、期待が高まる。

しかし、いざ手をつないでしばらくすると、死んだはずの老婆が普通に起き上がり、「あたしも引く手になっちまったか…」と言い出すので驚いた。かなりリアリティレベルは低い作品のようだ。さらにラスト近辺ではおばあちゃんがほとんど寄生獣のようになってしまい、触手バトル展開に突入したころには目が点になっていた。

 

と思うと、次の「モドル」は異常なところのない、純度100%のいい話であった。「こういうのがいいんだよ!」と思ったものの、1話目のインパクトが強すぎて、あっさりすぎて物足りないと思ってしまった。

 

3作目「アタエル」はまたおかしくなってくる。金持ちの奥さんに、海外旅行で留守にする間、毎日犬にエサをやってくれと頼まれる話なのだが、まあ、オチは大体予想できるとおりである。だったのだが、結果としては、範馬勇次郎のようなムキムキマッチョな老婆が壁にショルダータックルかましているビジュアルが脳内にこびりついて離れないということになった。

 

4作目「タベル」は、とある男性が作る料理をただ食べるだけ、といううらやましいアルバイトの話。これも、すごく良い話だった。しかし、1話目と3話目の味付けが濃すぎて、普通にいい話程度だと薄味に感じてしまう。これは、バカミスといい話のミルフィーユや!

 

5作目「メグル」も超常的な要素が入ってくる。なぜか毎年、全く同じ内容の依頼をして、話す会話も同じ、という謎の女性の依頼の話である。この話は1話目3話目と違って優しい気持ちになれる魔法のような不思議な話だった。

 

バカ→いい話→バカ→いい話→バカだけどいい話という構成で、作者の幅の広さは多いに感じ取れる1冊だった。自分としては、1冊の間ではコンセプト等統一してほしいと思っているので、この作品総合では残念ながらいまいちだった。次は、短編ごとの温度差に惑わされないために、長編作品を読んでみたいと思います。