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【読書感想】ソードアート・オンライン オルタナティブ クローバーズリグレット(3)/渡瀬草一郎

 

 ソードアート・オンラインのスピンオフ小説と言えば、アニメ化もされた時雨沢恵一さんのガンゲイル・オンラインだが、もう一つ他の作家によって書かれたスピンオフ小説が存在する。それがこのクローバーズ・リグレットである。GGOと同じくSAOの世界観を生かし、また違ったアプローチで書かれた傑作シリーズだ。

 

舞台となるのは、あのスリーピングナイツもプレイしたという和風ホラーVRMMORPG・アスカエンパイア。【戦巫女】のナユタ(リアルは高校生)、【忍】のコヨミ(リアルはOL)、そしてVR関連の様々な業務を請け負う「クローバーズ・ネットワークセキュリティ・コーポレーション」の社長であるクレーヴェル(リアルは20台後半男性)の3人がメインキャラクターで、アスカエンパイアの世界で起こる様々な事件に立ち向かっていく。

 

このシリーズの最大の特徴は、SAOやGGOがバトル中心の作品であるのに対して、謎解きメインのミステリ風味になっていることだ。VR世界での人探しであったり、イベント中に発生した怪奇な事件の調査だったり、バトルは味付け程度で、最終的には事件の背景にある謎を解いて解決するという話になっている。もちろんゴリゴリの本格ミステリというわけにはいかないのだが、VR世界の設定を生かした事件や謎解きはなかなか新鮮だ。

 

そして、これは本家ですらあまり触れていない領域と思うのだが、VR技術が発展した時、ゲーム世界にとどまらず、社会にどういった影響を与えるのか、どんなビジネスが生まれるのか、といった考察があるのもこのシリーズの特徴と言える。クレーヴェル自身、「高年齢層やゲームになじみがない人向けのVR世界ガイド」という仕事がきっかけでナユタやコヨミと知り合っている。アスカエンパイア運営サイドの人間も頻繁に登場するし、上にあげたガイドであったり「VRゲームを利用した広告宣伝」「VR世界での観光旅行」などの新しいビジネスの可能性に触れている。この点、SAO作者の川原さんが(科学的な考察があるわけではないという意味で)SAOはSFではないと言っているのに対して、クローバーズ・リグレットはSFしているとも言える。

 

本家SAOとの関わりの深さも忘れてはいけない特徴だ。本家キャラが直接的に登場するわけではないのだが、メインキャラの一人はSAOサバイバーであるし、そのほかにもサバイバーやSAO事件の被害者遺族などが登場し、SAO事件の後、社会にはどんな影響があったのか、を垣間見ることができる。時系列としては、1巻がマザーズロザリオ、2巻がオーディナルスケール、3巻がアリシゼーションくらいの時期になるらしい。

 

最後に、ナユタとクレーヴェルの恋愛要素があることにも触れておきたい。この二人、初めはとある過去の関わりから親しくなっていくのだが、次第にお互いを意識するようになっていく。しかし、クレーヴェルは20代の社会人、ナユタは高校生であり、なおかつ両者ともにとびきりの常識人である。特にクレーヴェルは大人としての自制心をいかんなく発揮し、ナユタを過剰なまでに守ろうとする。そんな二人が、「勉強を教える」とか「病気の看病をする」とか、「一緒にいても仕方がない」合理的な理由をひねり出しては徐々に接近していく様子が微笑ましく、「社会人と学生が節度を保ったうえでいかに親しくなるか」というある意味新機軸の恋愛ものになっている。

 

ここまで紹介してきたクローバーズ・リグレットシリーズだが、実はこの3巻で完結している。クレーヴェルとナユタの関係性をはじめ、色々な要素に一通り決着がついているので、SAOシリーズのファンでまだ本作を読んでいない方は、是非読んでみてほしい。