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【読書感想】闇の喇叭/有栖川有栖

この1週間、いわゆるお盆休みというやつで、基本的に一日中家族と一緒に過ごしているものだから、ブログを書くインプット的なものがなかなかできず、更新がめっきり減ってしまった。まあ、そんなに毎日書こうとか思っているわけでもないけど。なんとか空き時間を使って1冊読めたので感想を書いてみる。

 

闇の喇叭 (講談社文庫)

闇の喇叭 (講談社文庫)

 

 有栖川有栖さんの「闇の喇叭」という作品だ。有栖川さんはいうまでもなく新本格ミステリーのフロンティア、レジェンド作家の一人。同じ時期にデビューしたレジェンド作家さんの多くがすでにほとんど新作を読めなくなっている今なお、コンスタントに新作を発表してくれるすごい人だ。作風は極めて堅実、実直。ミステリの教科書のような、それでいてキャラクター小説としての魅力も備えた、昔からのミステリ―ファンにとっては、まるで実家のような安心感があるのが有栖川作品だと思っている。

 

この「闇の喇叭」の特徴は、まず有栖川作品には珍しく、現代日本を舞台にしていないことがあげられる。太平洋戦争において、軍部のクーデターによって終戦がわずかに遅れ、そのわずかな違いによって、紆余曲折を得て私たちの住むこの現代日本とは異なる歴史を歩むことになったもう一つの日本が舞台になる。その違いは、例えば北海道が、日ノ本共和国を称した独立国家となっていたりする。そして重要なポイントは、国家によって探偵行為が禁止され、「警察類似行為」として処罰の対象となるということだ。

 

本作の主人公は高校生の少女・空閑純。彼女の両親は、国家の意思に逆らい、調査活動を行って多くの人を救っていた「探偵」であった。しかし、何かしらの事件に巻き込まれた母は失踪し、残された父と娘は、生活拠点を大阪から母の故郷に移し、母の帰還を待ちながら、探偵としての過去を隠して静かな生活を送っている。ところが、彼女の暮らす小さな町に、不審な人物が現れたとのうわさが流れたことをきっかけに、変死体が相次ぎ発見されるなど騒ぎが起きる。そしてこの出来事をきっかけとして、探偵の娘としての彼女の人生は大きく動き始める、という内容だ。

 

背景と内容の説明ですでにいつもの読書記事と同じくらいの文章を書いてしまった。ただ、正直本作単体として、ミステリとしての感想はそれほど多くない。アリバイトリックは、読んでみて、ふんふん、と思ったがそれほどの意外性はなかった。事件全体の背景にも大きな仕掛けがあったが、目新しさは感じられなかった。もちろん納得感はあったし、犯人自体はあまりマークしていなかった人物だったので、意外ではあったが。ただ、読み終えて印象に残っているのは、この作品単体での感想というよりは、探偵・空閑純の誕生とこれからの活躍に対する期待感だ。すでにシリーズものとして続編が出ているということなので、そちらもぜひ読んでみたい。