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【読書感想】ライオンの棲む街/東川篤哉

東川篤哉さんのライトな探偵もの「ライオンの棲む街」を読んだ。

 

 仕事と恋と貯金を失い、失意のままに東京から地元平塚に帰ってきた美伽は、再会した友人・生野エルザの仕事を手伝うことになった。何も知らないままに地図を頼りに向かったその事務所の扉には、「生野エルザ探偵事務所」と書いてあった…。

というわけで、神奈川県は平塚(の一部)でその人ありと知られる名探偵エルザと、偶然にもその助手を務めることになった美伽のコンビが活躍するミステリ―短編集だ。東川作品は、どれを読んでも60点~80点の間に収まる感じの安定感が魅力だが、この作品も例にもれず、どっちかというと80点よりのほうの良作だった。

 

5本の短編が収録されているが、共通しているのは、探偵として受けた別の依頼をこなしているうちに殺人事件に巻き込まれる、というパターンだ。その中でも、ターゲットを張り込みや尾行しているうちに、自分たち自身が殺人事件のアリバイ工作に利用されてしまい、トリックを暴くために奮闘するという展開が多い。というか、毎回それだなーと思っていたら、5話目だけが唐突な密室ものだった。

 

ワンパターンといえばワンパターンなんだけど、細部は毎回工夫が凝らされていて、トリックは心理的なものから物理系のものまで幅広い。そこに至る過程、謎解きの展開も多彩で微妙に読者の予想をずらしてくる。東川作品の売りである、キャラクター同士の掛け合いも健在だ。野生児で豪快なエルザと一見常識人だけど切れると怖い美伽のコンビは魅力的で、楽しい中にも友情を感じさせるシーンもあったりして、トータルで飽きることなく読むことができた。

 

ところで、本作には平塚を舞台にしたご当地ものという側面もある。実際に平塚に存在するスポットやイベントが次々に登場するので、現地を知っている人からすると違った楽しみ方もできるだろう。私は平塚には明るくないのだ、実家が作家、漫画家、アニメスタジオなどがひしめいている地域にあるので、住んでいるところがフィクション作品の舞台になるお得感はよく知っている。もしそちら方面出身の方がいたら、ぜひ読んで見てほしい。もちろんそうでない人にもお勧めできる、気軽に読めて謎解きのレベルも高いミステリーだ。