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プレイボール2が異世界転生チートものになっている件

プレイボール2のことを知っている、または覚えているだろうか。

 

プレイボール2 1 (ジャンプコミックス)
 

 

ちばあきお作による伝説の野球漫「キャプテン」の続編であり、墨谷二中を卒業した谷口が墨谷高校に進学して甲子園を目指す「プレイボール」。そのさらなる続編として、グランドジャンプ誌においてコージィ城倉によって描かれている作品である。連載開始が発表されてから、その絵柄の完コピぶりが話題になったくらいで、最近はあまり話を聞かないが、実はとんでもない展開になっていた。

 

これまでの展開

プレイボール2は、原作であるプレイボールの終了直後、谷口が3年生になり、後輩のイガラシらが入学してきたところから始まる。谷口、倉橋、島田、松川といった2,3年の主力に加えて、1年の秋から墨高に編入してきた2年の丸井、墨谷二中の2年後輩で、中学時代には全国優勝の立役者となったイガラシ、江田川中出身でイガラシのライバルだった井口といったメンバーで、谷口は最後の大会に挑む。

余談だが、ちばあきおさんの絵はシンプルだが、素朴な中に豊かな感情が伝わってくるものだった。コージィさんはガワは完コピしたもののそのあたりのニュアンスまではなかなか難しいのか、特にどちらかというと表情の少ない谷口は、「無表情で部員にとんでもない猛練習を課すサイコパス」っぽく見えたりする。でも、とにかく絵の似せ方はすごい。ほぼ違和感なく読める。

そしていよいよ大会が開幕。初戦の相手は、中学から因縁の、佐野投手を擁する青葉高校だった…。

 

まさかの戦略に打って出る墨谷高校

試合は行き詰る攻防を見せるが、墨谷リードで終盤を迎える。驚くべきはそこにいたるまでの展開だ。

中学時代同様に、ボロボロになりながらも鬼気迫る投球を見せる青葉のエース佐野に対し、墨谷のとった戦略は、なんと継投策!

先発  井口 5回2/3

中継ぎ 松川 1回1/3

セットアップ イガラシ 1回

抑え  谷口 1回?

4人の投手を小刻みに継投し、青葉を翻弄するのである。井口に対して、1年生投手の経験のなさを攻めて体力を奪う作戦に出る青葉。しかし、途中から次々とフレッシュな投手が出てくる墨谷に対し、明らかに困惑した態度を見せている。

そりゃそうだ。最近でこそ、複数の投手を擁して傾倒する高校もちらほら見るが、プレイボール連載当時の1970年代に、高校でそんな戦略あったのだろうか? もちろん絶対的エースがいないとか、うちこまれてやむなくかえざるを得ないとかの理由で継投するケースはあったと思うが、基本はエースが投げぬくのが大前提だったように思う。

ましてやここはキャプテンからつながるちばあきおワールド。ズタボロになりながらもマウンドに立ち続けることこそ美徳の世界である。そこにもってきて、「4人の投手で継投する」という戦略は、異世界から持ってきたとしか思えないほどのインパクトがある。

 

谷口の「魔球」

そして最新の話では、いよいよ最終回のマウンドに立った谷口が、ピンチを迎える。打席に立つのは佐野…のはずだったが、力尽きバーターボックス手前でばったり倒れこんだ佐野は、代打を送られる。代打に対する投球について、谷口はショートを守るイガラシを呼び、シュートで内野ゴロを打たせてゲッツーを狙うと宣言する。

イガラシは、肘を内側にひねって回転をかけるシュートでは球速がおちるので強いゴロになりにくく、ゲッツーがとりにくいと意見を言う。それに対し、谷口は球速の落ちにくいシュートの握りをイガラシに伝授する。それは、いまでいうツーシームの握りだった。

ツーシームの握り自体は昔からあっただろうし、シュートの1種として投げられていたとは思うが、変化球の1種として認識されるようになったのは00年代以降ではないかと思う。ここでも谷口は未来の野球技術を70年代の試合に持ち込んでいる。これはもはや、現代のオーバーテクノロジー異世界に持ち込んで無双する、異世界転生チート野球ではないか?

 

未来の野球技術が意味するもの

谷口タカオは実は未来人だったんだよ! な、なんだってー!

ということではもちろんなく。

 

これは、コージィさんの意図的な「戦略」であると思う。というのも、これらの未来技術に対する演出がわざとらしいくらいなのだ。継投策についていえば、かつてのライバル佐野には、ちばマンガにおけるスタンダードであった、「ボロボロになりながら投げぬき、最後は力尽きる」という役割を演じさせておいて、一方墨谷の継投策には大げさなくらいに驚いて見せる。

ツーシームについても、そもそも今投げているのは谷口なのに、わざわざショートからイガラシを呼んで握りを解説する必然性がない。何度も審判から投球を促されながら、わざわざ試合中に後輩に投球指南をするのは不自然すぎる。

 

つまり、コージィさんのやりたかったことは、「プレイボール2では、墨谷高校に現代野球の知識や技術を使って下駄をはかせるよ」という宣言ではないだろうか。

 

この連載、上にも書いたが、谷口3年時から始まる。新入部員についても原作で描写済みで、これ以上戦力の底上げはできない。

谷口 3年 三、投

倉橋 3年 捕

丸井 2年 二

松川 2年 投、三

イガラシ 1年 投、遊

井口 1年 投、右

その他 島田、加藤など

この戦力で戦うことは決定している。かつ、谷口入学以来の墨高は、1年時3回戦、2年時ベスト8まで地方大会で勝ち進んでいるので、物語上、3年時には少なくともそれ以上の成績はおさめる必要があると思われる。まあ、変なところであっさり負けるのもちばマンガあるあるなんだけど、さすがに続編企画を立ち上げてのそれはないと思うので。

 

そんな条件のもと、現有戦力で墨谷が勝ち進むための要素として、「現代野球から持ち込んだオーバーテクノロジー」を考えたのではないか。「おれはキャプテン」はじめとする野球マンガで見せてきたコージィ流ひねくれ心がでただけかもしれないが…。

 

自分としては、これで「墨谷高校がある程度勝ち進む」ことが担保されたように思うし、単純に意外性があって楽しいので喜んでいる。きっと近い将来、カットボールを駆使するイガラシや、犠牲バント無意味論を唱える谷口の姿が見られるのではないかと楽しみだ。