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【読書感想】忘却のレーテ/法条遥

昨日のリライトに続いて、法条遥さんの「忘却のレーテ」を読んだ。色々と破綻気味のところもあったリライトと違い、こちらは綺麗にまとまっていて素直に面白かった。

 

忘却のレーテ (新潮文庫nex)

忘却のレーテ (新潮文庫nex)

 

 両親を交通事故で失った笹木唯は、父が残した借金の支払いのため、高額の報酬が得られる新薬の臨床実験に参加する。その新薬「レーテ」は、一定期間の記憶を強制的に失わせるという画期的なものであった。閉鎖された実験施設の中で、毎朝目覚めると前日までの記憶が失われており、自分が実験に参加しているところから説明を受ける。前日に他の参加者と交わした会話も、そもそも参加者のこと自体も覚えていない。そんな風に繰り返される実験の日々の中で、唯は無残な死体を発見する。これは誰? 誰が殺したの? もしかして、私が…?

 

一日しか記憶を保持できない(薬で強制リセットされている)主人公、一定の時間ごとに区切られて進行するストーリー。映画「メメント」っぽいなあ…と思って読んでいたら、思った以上にメメントだった。ざっくりいうとそんな感じの作品。毎日記憶がリセットされて、同じようなやり取りが日々繰り返される中で、じわじわと違和感が立ち上ってくる仕掛けが面白い。注意深い人なら、かなり早い段階で全貌に気が付くのではないかな。私? 私は、注意深くないので最後まで気が付きませんでした。

 

2冊続けて法条遥さんの作品を読んでみて、この作家さんは、既存のアイデアをねじまげたりゆがませたり、めちゃくちゃにつなぎ合わせて、新しい効果を生み出すことにたけている人なのかな、と思った。前回のリライトも、ラブコメあるあるシチュエーションにタイムリープの要素を組み合わせて過剰で異様な時間SFに仕立てていたし、この忘却のレーテにしても、閉鎖空間ミステリの典型的パターンに記憶ものの要素を足して思わぬ効果をあげている。こういう、枯れた鉱脈から宝物を見つけ出してくれるスタイルの作家さんは大好きだ。願わくば、後味すっきりな作品も読んでみたいものだけど。

 

ともかく、設定よし謎解きよしで、本格ミステリ好きな人にお勧めできる1冊だった。リライトとかより、こっちのほうが法条作品の入りにはよかったかもしれない。また見かけたら他の作品も読んでみたい。