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絶え間なき離婚危機と戦うブログ

【アニメ感想】進撃の巨人 Season3 第52話 光臨

今週は、マルコの死にまつわる回想からスタート。

 

マルコの死は、進撃の巨人という物語の序盤戦でかなりインパクトのある出来事だったし、ジャンの覚醒にもつながったわけで、今まで描かれた分でも十分に重要な意味があったと思う。しかしそれだけじゃなくて、さらにライナー、ベルトルト、アニもかかわっていて、さらにライナーの人格が分裂してしまうきっかけでもあったという…。初めからどこまで考えられていたのかわからないけど、つくづくよくできていると思う。このあたりの伏線や種明かしがすごく完成度が高いから、他のところで少々グダっても全然許せてしまう、それくらい自分としてもこのあたりの一連のエピソードは気に入っている。

 

特に、アニがマルコの立体起動装置をカチャカチャやって外すときの表情とか、彼女が本当は優しい性格なんだっていうのを物語っているよね。できることなら仲間を犠牲にしたくはなかった、みたいな。これがきっかけで、完全に心を見せない氷の女モードに入っちゃったのかな。

 

そして後半。3人の戦士がコーヒーらしきものを飲みながら会話するシーン。ジークの声はすごく渋いのに、しゃべり方が軽いからなんとも言えない年齢不詳感ある。アニがどこかでキックの練習してる発言はちょっと笑った。この3人の中でも、アニってそういうキャラなんだな。なんか黙々と殺人ローキックの練習してるところが想像できる。

 

壁の上でキャッキャウフフ風に走る男二人、唐突に差し込まれるラブコメ展開に頬を染めるベルトルト。ライナーって、クリスタ関係でやたら恋愛がらみの発言がネタ的に注目されたけど、他人の色恋沙汰にもグイグイ入っていくタイプなんだな。根っからの恋愛脳と言える。訓練兵時代にも、誰が好きとかそういう話を振ってうざがられていたに違いない。

 

ここまでで回想が終わり、ついに樽トルトが戦線に放り込まれる。巨人化するだけで周囲一帯を破壊できるとは恐ろしい。そんな恐ろしいことだったら、それこそ以前のシガンシナやトロスト区で出現した時には、どこで変身したんだろう。遠くで変身してからこそこそ歩いてきたとするとシュールだ。

 

ベルトルトとアルミンの会話は、なかなか緊張感があって良かったけど、覚悟完了しているベルトルトには効かなかった模様。仲間で、誰も悪くなくて、それでもどうしても全員が死ななければいけないって言われたら、いったいどんな状況なんだ?と思うよなあ。アルミンの危機にすかさず切りかかるミカサはさすがにカッコいいが、それをしのぐトルトもなかなかのもの。

 

最後、とうとう超大型巨人が登場し、あたりを蹂躙する。104期の面々はどう対処するのか?リヴァイと団長、そして獣はどう動くのか、というところで次回に続く。毎回クライマックスで密度が濃すぎ、見終わると続きが気になると同時に結構疲れる。来週はもっとすごいことになりそうだ。

【アニメ感想】進撃の巨人 Season3 第51話 雷槍

調査兵団の新兵器、雷槍が初披露された第51話。

 

序盤はエルヴィン団長とライナーの駆け引きがメイン。馬を狙って調査兵団の機動力と同時にライフラインを断とうとするライナーに対し、それを防ぎたい団長。これまでの戦いで多くの犠牲を払い、戦力が低下している調査兵ではまともにライナーの足止めをできるのはエレン巨人とリヴァイといったごく限られた戦力のみ。ミカサですら、単騎ではライナーに太刀打ちできないであろう…。そこで団長が打った奇策は、エレンをおとりとして使いライナーを馬から遠ざけつつ、同時に攻勢に出るという攻守両どりの策であった。

 

まあ、実際のところ戦力がいないからこその苦渋の選択なんだろうけど、結果的にはいきなりライナーとの決戦に突入したから万々歳だ。以前もエレン巨人は鎧の首を極めて破壊しかかっていたけど、今回はさらに硬化パンチという打撃技を身に着け終始有利に立ち回っていたようだ。こぶし全体を硬化させるんじゃなくて、ナックル部分にだけかまぼこの板みたいなプレートを装着するあたり、硬化ってずいぶん自由自在にできるもんなんだな。

 

あと、要所で出てくる、戦場を簡略化した図みたいなやつが妙に可愛くて、場面の緊迫感との差が激しすぎてなんかシュールだった。団長が作戦を説明するときにあんな感じの絵をかいてるのかな、とか想像したらなんかシュールだ。

 

そして後半、エレンが作った隙に立体起動で接近したミカサとハンジ、そしてリヴァイ班(リヴァイ抜き)が、鎧の巨人に次々と雷槍を畳み込む。この、エレンともみあう鎧のところに接近するときの立体起動シーンかっこよかった。特に雷槍をミカサとハンジが両目に突き刺すくだり。ミカサの超人的な動きについてくるハンジさん、さすがの実力者である。

 

一発目の集中砲火で首のガードが解けたあとの、コニー、サシャ、ジャンのやりとりが好き。効果があって喜ぶと同時に、予想以上に強力すぎてやべえみたいな複雑な心境が伝わってきた。俺たちほんとにライナー殺しちゃうの?みたいな。やっぱりかつての仲間に自分でとどめを刺すことへの恐れというか躊躇というか、こんな状況でもライナーとの友情は消えていないんだなっていうのが切なくも嬉しかった。そしてそれを鼓舞して迷いを断ち切るのがジャンっていうのがね…。

 

ということで今回は終わり。次回は、まだ姿を見せぬベルトルトがついに動く模様。どんな展開になるか、原作を読んでるから全体的にはわかっているんだけど、細かいところはいい感じに忘れているので楽しみだ。

【アニメ感想】進撃の巨人 Season3 第50話 はじまりの街

仕事が忙しかったり体調が悪かったり、色々で更新をさぼってしまっていたが、進撃のアニメが再開したとなっては更新しなくてはなりますまい。

 

久々の第50話は、ウォールマリア奪還のため、シガンシナ区を目指す一同からスタート。緊張感のあるシーンだったが、いつもの幼馴染三人の掛け合いになんだかほっとする。原作の展開がアレだけに…。すっかりお休み状態の巨人と遭遇。見逃してあげてたけど、スパッとうなじ切っていったほうがいいんじゃないのかね?帰りに襲われないとも限らないわけだし。

 

馬上から立体起動に移るときの、馬の背中の上に立ち上るくだり、なんかシュールで笑ってしまった。今までも、壁外調査のときなんかに乗馬状態から立体起動するシーンいくらでもあったと思うけど、いつもあんなことしてたっけ?

 

さて到着後。事前に見ていたPVでもあった、エレンが立体起動で壁を飛び越えながら巨人化し、硬化能力で壁をふさぐ一連のシーンはかっこよかった。特に、おれ達は生まれた時から…えっと、生まれた時からナントカで、自由だからだ!みたいなセリフが、作品のテーマを高らかにうたい上げる感じで良かった(うろ覚えだけど…)

 

みごとミッションを半分とはいえ達成したエレンに対し、アルミンにもすかさず見せ場が。ちょっとした痕跡からライナーたちの待ち伏せを察知したところはさすが。昨今のなまくらと化した原作アルミンと比べると頼りがいが雲泥の差である。エルヴィン団長から。捜索チームの指揮を託された時のテンパリ具合はまあご愛敬で。先輩兵士に左右から詰めよられてたじたじとなってるところも面白かった。でも、勘ですじゃなくて、なにかしら理由はいえたはずだと思うんだけどどうだろう? 壁の巨人のことは機密事項だから言えなかったのかな?

 

そして、不幸な兵士がライナーの隠れ場所を発見してしまったがために殺害され、犠牲者一号に。すかさず仕留めにいく兵長はさすがだったが、仕留めきることはできず。以前、初めて正体を現したライナーベルトルトにミカサが切りかかった時もそうだったけど、人間フォームなら余裕で殺せると思いきやいつもやりそこなってるよな。まあお話の都合といってはそれまでだけど、みんな巨人のうなじを狩る訓練ばかりやってるから、人間サイズだと手元が狂うってことにしておこうか。

 

ラスト、鎧に加えて獣の巨人が登場し、さらにノーマル巨人がズラリと並んだところはいきなりクライマックス感すごい。今回何話分やるのかわからないけど(4月末からはじまったくらいだから、10話くらいなのかな?)、テンションMAXで走り切る覚悟がこもっていた。

 

あとエンディング。104期メモリアルって感じで泣けたな…。あのころに戻りたいけど、もう戻れないんだよなあ…。

 

【読書感想】怪しい店/有栖川有栖

有栖川有栖さんの短編集「怪しい店」を読んだ。そのタイトル通り、様々な店がテーマになった短編集だ。主役を務めるは、われらが火村先生と作家アリスの名コンビ。さながら、長年通っているなじみの小料理屋のような、安心できる味が楽しめた(そんな行きつけの店ないけど)。

怪しい店 (角川文庫)

怪しい店 (角川文庫)

 

「古物の魔」はとある骨董品店の店主が殺害される話だ。店主は偏屈で、周囲の人とトラブルを起こしがちだったことに加え、最近も売った品を買い戻したいという客ともめていたらしい。果たして彼を殺したのは誰か?

怪しげな容疑者が次々と現れる中、火村先生は、死体の発見状況をヒントにしてたった一人の真犯人に近づいていく。終盤、犯人との行き詰る攻防が印象的だった。

 

「燈火堂の奇禍」は、古書店が舞台。店主が怪しい客を追いかけていき、もみ合いになった結果持病を悪化させて倒れてしまう。店主は倒れる間際に「泥棒…」といっていたらしい。しかし、店からなくなっているものはない。果たして盗まれたものは何か?という短編。単純ながら意外性のある解決に納得。

 

「ショーウインドウを砕く」は芸能プロダクションの社長が主人公で、彼がとある身勝手な理由から愛人を殺してしまう。犯人は、被害者が家の鍵をなくしていたということを利用し、外部からの犯行を装うのだが…という話。これ、なんかテレビドラマで見たことがあったような。途中で真相を思い出してしまった。めずらしく倒叙スタイルでかかれている。些細なほころびから、犯人が追い込まれていく流れは倒叙ものの醍醐味だ。犯人視点だと火村先生が死神さながらに見えるんだな。

 

「潮騒理髪店」は、火村先生が地方でたまたま立ち寄った理髪店での体験談を、電話でアリスに語るという体の話。ある女性が、電車に向かってハンカチを振っているというう映画のような光景に遭遇した火村先生。その後に寄った理髪店で聞いた話が、さきほどの女性に意外な形でつながって…。電車にハンカチを振るという昭和を感じさせるシーンだが、実は予想もできないような理由があった。予想もできなかった結末だったけど、面白かった。

 

「怪しい店」は表題作。人の悩みをただ聞くという「みみや」という商売をしていた女性が殺害された。第一の容疑者であった、夫にはアリバイがあることがわかるのだが。謎解きがなかなかに複雑で、ちょっとわかりにくかった。火村先生もいつももったいぶるから…。

 

通して読んでみて、これはすごい!というような展開はなかったものの、どれも面白かった。もう、ここまで作品の数が多くなると、クオリティを維持するだけでも大変だろう。有栖川先生が、今でもコンスタントに作品を書いているのは本当にすごい。

 

ちなみに、あとがきが烏賊川史シリーズの主人公とヒロインの対話形式になっている。これだけでも一つの作品として楽しかったので、文庫版をもし読んでいたら、他の機能も合わせて確認す

【読書感想】午前零時のサンドリヨン/相沢沙呼

彼方のアストラに絶賛コメントを載せていたので、がぜん親近感が増した相沢沙呼さんのデビュー作、「午前零時のサンドリヨン」を読んだ。サンドリヨンとは、いわゆるシンデレラのことなんだそうだ。 

午前零時のサンドリヨン (創元推理文庫)

午前零時のサンドリヨン (創元推理文庫)

 

僕は、一人のクラスメイトが気になっている。いつも憂いを帯びた表情で、あまり友達もいなそうな酉乃初。でも僕は彼女に別の顔があることを知っている。彼女は、夜になるとレスランバーでマジシャンのアルバイトをしているのだ。まるで別人のように華やかにほほ笑む彼女をみた瞬間、完全に一目ぼれをしてしまったのだ。でも、僕は一目ぼれってやつが嫌いだ。なんだか、彼女のことを何も知らないのに、外見だけで好きなったみたいに感じるから。だから、酉乃のことをもっと知って、本当の意味で彼女に恋をしたいんだ…。

 

と、そんな、あま~い導入で始まる本作。高校生の僕、須川君が、マジシャン兼高校生の酉乃さんと協力して、学校で起こるいくつかの事件の謎を解いていく。その過程で、二人の仲は進展するのか…?みたいな感じの話だ。

 

読み始めたときは、正直語り手である須川君のモノローグに辟易した。「僕ってば、なんて…なんだろう」「嘘です、すみません閻魔様」などなど、なんというかあふれる昭和感というか(閻魔様って…)、良く少年マンガに出てくる少女マンガのパロディシーン的な、大げさかつ甘ったるい言い回しが頻発して、ちょとこれはきついなあ、と思ったものだ。一応、この点は後半に行くにつれて薄まって解消されていくので、自分と同じように最初で躓いても頑張って読み進めて欲しい。

 

須川君の恋愛脳全開っぷりに比べて、酉乃さんや彼女を取り巻く女子たちの心の中はかなりシビアだ。将来の夢と自分の力量の狭間で板挟みになっていたり、友達との人間関係に苦しんでいたり、いじめにあっていたり…。学校で起こる謎を追っていくと、最後は女の子の心の問題につきあたる。この作品の謎解きは、不思議現象についてのテクニカルな部分での種明かしと、そして次に原因となっている心の問題を解いていくという二段構え。そしてこの時に、酉乃さんのマジックが役に立つ。目の前で起こる不思議な現象に気を取られて、思わず本音を吐露してしまったりするわけだ。マジシャン設定を生かした上手い構成だと思う。

 

そして、最後には酉乃さん自身の心の問題が見えてくる。ここで須川君は男を見せられるのか?最後の最後で、ワトスン役だった彼が主役に躍り出る展開も面白くて引き込まれた。

 

素直な気持ち、トリックや謎解きでそこまで印象に残ったものはなかったけど、恋愛もの兼青春小説として、良くできている作品だと思う。酉乃さんかわいいしね。須川君、気になったクラスメイトの女子がいたとして、話しかけて仲良くなろうって行動ができるだけでも偉いしすごいよ。自分だったら、絶対できなかったな。三年間片思いして終わりだ。まあ、そもそも男子校だったわけだけど。

 

 

 

【マンガ感想】進撃の巨人 第116話 天地

ビークが単身エレンのもとに潜入してきたところからスタート。ビークさん、なんかもっとこう、薄幸美人的なビジュアルだった気がするけど、なんとなく変わったような…きれいなモアイっていうか…。こんなだったっけ?

 

まあそれはそれとして、突然の攻撃だったけど、エレンは落ち着いたものだ。15歳エレンならたちまち逆上していたことだろうけど、酸いも甘いも噛分ける今の19歳エレンさんは動じない。ビークの言葉がハッタリだとたちどころに見抜き、攻守を逆転させてしまった。こういう面では、今のエレンには変な信頼感が持てる。以前の火の玉ボーイだったころが懐かしくもあるけど…。意外なことに打倒マーレのために協力を申し出るビーク。果たしてその真意は。

 

一方そのころ、捕らわれの調査兵団。エレンの話になり、喧嘩の原因を問いただすジャン。はぐらかす、というよりももう触れたくもないという表情のミカサ。つらい…。しかし、ジャンの思いは別のところにあった。ミカサを突き放したのは、なにか意味があるんじゃないかと示唆する。これ、すごく嬉しかったよ。自分も読者として、エレンのことを信じたい気持ちが強かったから。ジャンもまた成長したんだなあ。もう指導者の風格すらある。

 

イェレナの口から、調査兵団メンバーにも伝えられた安楽死計画。それを知ったアルミンが涙ぐんでいたのは、間違いなく、エレンの真意に気が付いたからなんだろうな。口先ではうまくごまかしていたけど。エレンもいっていたように、最近のアルミンは冴えない感じだったので、これをきっかけにして、正しい答えを導く力を持った聡明なアルミンに戻って欲しい。どうでもいいけど、神が短くなったアルミンとイェレナが似すぎで、同一人物が百面相しながら一人で会話してるように見えた。

 

そしてビーク。やはり、彼女はあっち側の人間だった。ガリアードと連携してエレンを仕留めに掛かるが、失敗。だが、ライナーを含む部隊がエレンのもとに迫っていた。

 

さあ、どうなる?マーレでの襲撃の裏返しになったけど、今度は不意を打たれてる分&調査兵団の協力が得られなさそうな分、エレンの分が悪いか? 劣勢のエレンに、アルミン&調査兵団が加勢的な展開になったら胸アツだけど、さすがにそんな都合のいい展開はないかな。あとなにか忘れているような気が…、あ、そうだ、兵長はどうなった? 今回は出てこなかったけど、生きてても少なくとも重症だろうし、すぐに参戦は無理だよなあ。

 

次回、どうなってしまうのか!いよいよ決着の時が迫っているように感じるなあ。

 

 

【読書感想】最良の嘘の最後のひと言/河野裕

最良の嘘の最後のひと言 (創元推理文庫)

最良の嘘の最後のひと言 (創元推理文庫)

 

河野裕さんの「最良の嘘の最後のひと言」を読んだ。

 

世界的な大企業ハルウィンは、年収8000万の破格の報酬を約束し、1名の社員を募集していた。年齢、性別、経歴一切問わず、ただ一つの条件は「本物の超能力者であること」。そして3月31日18時、残った7名の候補者は、1通の採用通知をかけた最終試験に挑む。不幸な未来が見える「メッセージ」の能力者として参加した大学生・市倉は、同じ参加者の少女・日比野と組むことになるが…。制限時間は日付が変わるまでの6時間。策略に満ちた試験の幕が上がる。

 

というわけで、大企業への破格の条件での就職をかけた能力サバイバルものといった感じの作品だ。まあ、こんなの、面白いに決まっているのである。この設定でつまらなかったら、正直作者の力量を疑うし、おいしいネタをつまらない作品で消費しやがって!と怒りすらわいてくるであろう。その点、安心と実績の河野裕さん、さすがのハイレベルな内容に仕上げていただいた。

 

能力バトルではなくて能力サバイバルものと書いたのは、基本的にこの作品ではあまり露骨な暴力沙汰は出てこないからだ。ハルウィンの課した試験の条件で、法律に裁かれるような行いをしたものは失格というものがあるし、そもそも出てくる能力者も、相手の視界を操ったり視界にあるものと手の中のものを入れ替えたり、暴力的な能力は出てこない。バレなきゃいいの精神でやらかすものもいるが、基本的にはだましだまされの頭脳バトルといった趣だ。

 

読んでみての感想としては、すごく面白い、面白いのだが、感情移入してぐっと引き込まれるというよりは、騙しあいや意外な展開を楽しむといった感じの作品だった。その理由としては、参加者たちが全員真の目的を最終盤まで明かさないので、気持ちを人物に寄せて読みにくいというのが一つ。もう一つは、試験からリタイヤしたはずの候補者が、生き残りの候補者に協力するという名目で舞台に残り続けるので、あまりメリハリ感がないのが一つ。そして、なんだかんだ手に入るのがお金と社会的ステータスということで、そんなものなくても普通に生きてはいけるわけで、試験自体にさほどの切実さがないこと、あたりだろうか。

 

そういうとあまり良くない印象を与えてしまうかもしれないが、間違いなく面白いのだ。特に自分は、この手の作品は大好きで読んだり見たりしまくってきたわけで、作者がどんな騙しのテクニックを繰り出してくるのかを楽しませていただいた。

 

イメージとしては、作者が「食らえ!『リタイヤを装って実は生き残っていた』!」「行け!『ダミーの候補者』」「秘儀『候補者の入れ替わり』!」「まだまだっ!『実は無能力者だった』」などと攻撃してくるのを、「その攻撃は知ってる」「その技ももう『見た』」「ふっ、あの作品と同じネタとはな」などと言いながら受け流していくという戦いが私の脳内で展開されていた。

 

この(私の脳内の)戦いの結末であるが、最後の最後、あと30ページくらいの段階で「それで終わりのようだな…すべて出し尽くしたようだが、私の勝ちだ…」と勝ち誇っていたところ、「まだ、終わりじゃない!これが最後の一撃だああああ!」と放たれた渾身の一撃で木っ端みじんに粉砕され、私の完全敗北となった。つまりは、最後の最後には騙されたってことだ。

 

能力者による騙し騙されのバトルロイヤルものの作品はいろいろとあると思うが、その要素全部入りと言ってもいい作品だと思う。登場人物の内面の描写をとことん省いた(これにもちゃんと意味があるのが素晴らしい)代わりに、この手の作品に出てくるありとあらゆる仕掛けやトリックが盛り込まれ、ページ数のわりには読みごたえがたっぷりな内容になっている。自分と同じように、このジャンルの作品が好きな人はぜひ読んで欲しい。